シャトー・オー・ブリオン

 


格の違いとはこのことか。
吞兵衛としてのマイルストーンを、一つ通過しました。

コロナ禍では東京に赴くことも憚られ、大きくスパンが開いてしまいました。いつも豪快なセールスをかけてくるワイン商も相当苦労したようです。

ドメーヌ・クラランス・ディロンのセールス・ディレクター ギオム・アレクサンドル・マルクス氏の紹介(めっちゃ達者な日本語通訳のフランス人付)を受けつつ、フランス五大シャトーの一角、シャトー・オー・ブリオンのブランドを楽しむことができました。浅い情報をもとに名前だけで喜ぶ日本人ではありますが、このドメーヌ・クラランス・ディロンというのは、アメリカの金持ちが営む会社のようで、シャトー・オー・ブリオンを買い取ったんだとか。シャトー・オー・ブリオン、シャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン、シャトー・カントス(クウィントゥス。ネイティブの発音を無理やりカタカナにするならクゥイントゥス)の3つのブランドを持っていて、今回はこの3ブランドを試飲できました。※正直業界の人間ではないので勢力図に関して、精度はご勘弁。

左から順に試飲が始まりました。最後に白ワインを持ってくるのは、マルクス氏の粋な計らい。赤ワインが続くとタンニンの風味に疲れてしまうだろうから、とのこと。

毎度のことながら好き一辺倒の素人の感想です。赤ワインは順を追って酒の格が上がっていきます。当然美味しさも上乗せです。あしからず。


1. 2019 La Dragon de Quintus

ぶどう種: メルロー 86%、カベルネ・フラン 14%
ふち: 少しねっとり
色: 濃い紫
香り(アロマ): ぶどうの果実味、どストレート、非常に臭みがない
ファースト: めっちゃ美味い
味: チェリー、赤い果実、フレッシュ感
戻り: 清々しい充足感。すっきり、さっぱり
ボディ: ミディアムボディ~フルボディ

テーブルにグラスが運ばれた時点で芳醇な香りが薫ってきます。

飲む前からアル中の心は飛び跳ねているわけでありますが、ボルドーワインがお好きな方であれば一度は聞いたことがあるであろうサンテミリオン。この地で作られたワイン。スライドに表示されたドローンで上空から撮影された画像では地の果てまでブドウ畑が点々と広がっていました。日本では土地を広げてもすぐに山にたどり着いてしまいますが、フランスでは丘といった起伏はあっても産業を遮る山とまではいかないのでしょう。説明でも標高65メートルで、日当たりのよい丘なんだとか。「日本ではブルゴーニュが大変人気だと思います。それと似たような作りです」とのこと。

ビラージュ: サンテミリオン・カントス
プリュミエクリュ: ドラゴン・カントス
グランクリュ: シャトー・カントス

の住みわけ。

既知の通り、フランスは戦争ばかりで昔は大きな見張り台があったそう。今ではサンテミリオンも世界遺産に登録されており簡単に大きな建造物を建てることはできません。そこで代わりにドラゴンの像を建設し、見張りをさせているのだとか。なるほど、正に入口に立ったわけだ。

とにかく肉が喰いたくなります。牛か鹿を焼いた奴がいい。

2. 2013 Chateau Quitus

ぶどう種: メルロー 80%、カベルネ・フラン 20%
ふち: 粘度が強い
色: 濃い紫
香り(アロマ): 信じられないほどの果実感
香り(ブーケ): 強い香りに変わる
味: 酸味、日本料理に限らず様々食べている人向け。ドイツのリースリングや貴腐ワインと言った甘いものを好んでいる人は向かない。
フィニッシュ: 酸味からくる飲みごたえ
戻り: 固さを感じる 酸味
ボディ: フルボディ

シャトー・カントスというブランドを始めたのが2011年。シャトー・オー・ブリオンの醸造チームが始めたブランドなんだとか。醸造所の経営者やチーフリーダー、蔵の管理者の写真を紹介してくれました。曰く2013年は厳しい仕上がりとなった年で、長い熟成には向かないんだとか。その分、価格帯的にもシャトー・カントスのブランドを味わっていくにはちょうど良い入門としてよい。お勧めはバター料理。マルクス氏の紹介でも、味わいが少し固いとありました。アル中は好きな味わいですが、万人受けるするものではないでしょう。
※入門としてよい、とは買い手としてはカチンとくる表現に聞こえがち。ただ、年ごとに出来栄えが変わってしまう以上、これは仕方のない事情なのでしょうね。実際シャトー・オー・ブリオンも常に栄華を誇っていた、というわけでもないように見えます。

3. 2014 La Chapelle de la Mission Haut-Brion

ぶどう種: メモしそびれました…
ふち: スッキリ
色: 濃い紫
香り(アロマ): 酸味、クッキー類の香り、さわやかなぶどう、繊細な印象
香り(ブーケ): The ぶどう と言った印象で、赤ワインというものに抱く正攻法を進んだ
味: 飛ぶほど美味い、美味さ、酸味、味わいに真面目さ(真摯さ)を感じる
フィニッシュ: 清々しさ、飲みごたえ、酸味
戻り: 酸味、ぶどうの香り
ボディ: ミディアム

時間が経つにつれて凄い飲みごたえを感じます。
すっかり陶酔してしまい、メモも大分怪しくなってしまいました。

このラ・ミッションというブランドでは、細かく土壌を分けて管理しているんだとか。それぞれの土地を4つのランクに分けているんだそう。

ランク1: ファーストワイン
ランク2: セカンドワイン ← 今回のワインはコレ
ランク3,4: ブランド品として扱う

このラ・ミッションというブランドは、もともと修道院が保有していたそうで、場内にあるチャペルが紹介されていました。この名残でキリスト教の名残が強いんだとか。宗教の詳しいことは分かりません。御託の前に一献やろうか。

4. 2007 Chateau Haut-Broin

ぶどう種: カベルネ・ソーヴィニョン 46%、メルロー 44%、カベルネ・フラン 10%
ふち: スッキリ、粘度はない
色: 濃い紫
香り(アロマ): 焼けたものの匂い、洋菓子の匂い(パイ生地)
香り(ブーケ): 9月中旬~10月上旬の午後3時、晴れた空に漂うのんびりとした雲が見える
味: 美味いぶどう
フィニッシュ:ほのかにスモーキーな香り、全面には出てこない
戻り: 飲みごたえ、ぶどうの旨味が尾を引く、時間が経つと酸味
ボディ: フルボディ

シャトー・マルゴーでは一発で美味さを表現する言葉が見つかりましたが、シャトー・オー・ブリオンは探し出すのに少し苦労しました。相席だったことや会の前にお昼に食べた天麩羅が影響したかもしれません。冒頭に飲んだLa Dragonと比べるとはるかに太い味わいです。あれこれ赤ワインを飲んできましたが、赤ワインという酒に抱く端的な印象を正しく突き進んだ先にあるものと言ったところです。順調に登り詰めていくとこうなるよね、と言ったところです。マルクス氏の説明では、シャトー・オー・ブリオンのぶどう畑自体はローマ時代から存在しており、2000年くらいの歴史があるのだそう。現在の所有者であるディロン家が買収する前から続いており、現在はジョー・フィリップの3代目が切り盛りしているのだとか。自慢は、他社のコンサルやサポートといったものを一切受けず自分たちだけで運営している点。それだけ作りにこだわりと自信があるということでしょう。面積は50ヘクタール。他の五大シャトーと比べると半分くらいの大きさ。

ちなみに、赤ワインを楽しむときはワイングラスを回す、とよく言われますが、お高いワインではお勧めしません。今回はブーケとして味わいを見つけ出すことができましたが、すこし揺らした程度です。

アル中がメモに耽っていると以下のスライドが紹介されました。あぁ、もう少し右上に雲があるんですけどね、この感じだったかもしれません。


話は変わりますが、世界はこのスケールの土壌です。ケチな地主が抱え込んでいるような小規模経営じゃ、太刀打ちできないのは素人でもわかる。いつまで日本は江戸時代やってるつもりなのか…。

5. 2016 La Clarte de Haut-Brion

ぶどう種: セミヨン 75%、ソーヴィニョン・ブラン 25%
ふち: 粘度はない
色: 黄金色
香り(アロマ): バター、焼き洋菓子(砂糖)
香り(ブーケ): ほのかな酸味、焼き菓子の甘さ、くどさはない
味: 深い白ワイン、酸味ではない
フィニッシュ: 貴腐ワインの甘さではない甘さを感じる、心地よい舌触り
戻り: 飯を食いたくなる(焼いた野菜、魚料理)

これ、とびきり美味い白だな。白ワイン好きには堪らん。と書きなぐるほど。
マルクス氏の話では、シャトー・オー・ブリオンでは同じ畑で赤と白を作っているのだとか。一般的には、赤ぶどうと白ぶどうを同じ畑で作るブランドは少ないとのこと。前回シャトー・マルゴーでも白ワインは突出して美味しかったですが、このオー・ブリオンの白も格別。ここまで味わいがあると、味のつよい料理とも合わせたくなります。曰く、魚料理や貝料理がお勧めとのこと。個人的には白身魚のムニエルが思いつきました。グラスにまとわりつく甘さがとても良いです。年間15,000本。価格的にも何とか手が出るので一本買っておきました。本当はもっと味わっていたかったのですが、宴もたけなわということで、テイスティングの旅は終わってしまいました。この白ワインは、もっと語ってやらんといかん品よ。




退出時、今回試飲できたワインのボトルを確認することができました。きっと、もう2度とお会いできることはないでしょう。正に一期一会。

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